この記事では、朝鮮王朝時代の男性に注目し、王・両班・庶民の髪型と被り物についてまとめています。
・時代劇に出てくる黒い帽子の名前が知りたい!
・王と家臣で被り物がどう違うのか知りたい!
なつきこんな要望に応えていくよ!
韓国時代劇を見ていると、男性たちが実にさまざまな帽子を被っていることに気づきます。
実はあの被り物は、その人の身分と、いまどんな場面にいるのかを示す記号になっています。
そこで今回は「朝鮮王朝の男性の髪型・被り物一覧|王・両班・庶民の違いを解説」と題し、ご紹介していきます。
朝鮮時代劇の男性の装いを見分ける3つの視点
- 髪を結っているかを見る:頭のてっぺんに髷があれば既婚の成人、三つ編みを垂らしていれば未婚です。年齢ではなく結婚しているかどうかで決まります。
- 被り物の形を見る:つばの広い黒い笠なら外出中の成人男性、両脇に羽根が付いていれば出仕中の官僚、というように帽子が立場を示します。
- 場面を見る:同じ王でも、執務中と即位式では被る冠が変わります。屋内か屋外か、公式か私的かでも使い分けられました。
女性の髪型については朝鮮王朝の女性の髪型一覧で解説しています。身分の仕組みそのものを知りたい方は朝鮮王朝の身分制度、両班とは何かも合わせてどうぞ。
朝鮮王朝の男性の髪はどう結われていたか
被り物の名前は数多くありますが、その下の髪型は基本的に一種類だけです。まず土台となる髪の結い方を押さえると、帽子の違いだけに集中できます。
| 段階 | 結い方 | 状態 |
|---|---|---|
| 1. 未婚 | 髪を三つ編みにして背中へ垂らし、毛先をテンギで結ぶ | 結っていない=まだ子ども扱い |
| 2. 元服 | 冠礼という儀式で髪を頭頂に集め、束ねて結い上げる(サントゥ) | ここから一人前の男性 |
| 3. 土台を締める | 馬の毛で編んだ帯を額から後頭部に回して締める(マンゴン) | 髪の乱れを防ぎ、帽子を安定させる |
| 4. 被り物を載せる | 身分と場面に応じた笠や冠を被る | ここで初めて立場が表れる |
つまり男性の髪型そのものに身分差はなく、違いが出るのは被り物からです。女性の場合は髪の結い方自体が身分で分かれていたので、そこが大きく異なります。



時代劇で男性が家の中にいるとき、髷とマンゴンだけの姿でいることがあるでしょう。あれは日本でいう「帽子を脱いでくつろいでいる」状態なのよ。
身分と場面でわかる被り物一覧
時代劇に出てくる主な被り物を、着ける人の立場ごとに整理しました。
| 名称 | 読み方 | 着ける人・場面 |
|---|---|---|
| 冕旒冠 | ミョンリュグァン | 王。即位式や宗廟の祭祀など最高格式の儀礼 |
| 翼善冠 | イクソングァン | 王・王世子。日常の執務時 |
| 紗帽 | サモ | 文官・武官。朝廷に出仕するとき |
| 黒笠(カッ) | フンニプ/カッ | 成人男性の外出全般。両班の象徴とされる |
| 戦笠 | チョンリプ | 武官。軍務や警護のとき |
| 網巾 | マンゴン | 成人男性全員。すべての被り物の下地 |
| 宕巾 | タンゴン | 両班の室内着。笠を脱いだくつろぎ時 |
| 白笠 | ペンニプ | 喪中の人。国王の喪では臣民全員 |
サントゥ(髷)
頭頂で髪を束ねて結い上げた髷です。冠礼という成人の儀式で初めて結い、以後は生涯この形を保ちます。
結い方:全体の髪を頭のてっぺんに集め、根元をひもで縛って立ち上げ、余った毛先を巻きつけて小さくまとめます。落ちないようトンガチと呼ばれる細い簪を横から刺して留めました。儒教では髪や身体は親から受け継いだものとされたため、男性も生涯髪を切らないのが原則でした。
マンゴン(網巾)
馬の毛やヘラジカの毛を細く編んだ、幅の狭い鉢巻状の布です。額から後頭部へぐるりと回して締めます。
役割:ほつれた髪を押さえて顔まわりを整えると同時に、上に載せる笠や冠が滑り落ちないための土台になります。両端にはクァンジャという留め具が付き、その材質で身分が分かれました。高位の官僚は玉や琥珀、庶民は骨や角を用いています。時代劇で男性が室内で髷とこの布だけの姿でいるのは、外出着を解いた普段着の状態です。
カッ(黒笠)
細く裂いた竹と馬の毛を組んで漆を塗った、つばの広い黒い笠です。朝鮮時代劇でもっとも目にする被り物で、あごひもを結んで留めます。
見分け方:透けるほど薄く編まれた品ほど手間がかかり高価で、持ち主の格を表しました。つばの広さは時代によって流行があり、朝鮮後期には肩幅ほどに広がった時期もあります。海外ドラマで朝鮮時代の装いが話題になる際、まず注目されるのがこの笠です。
サモ(紗帽)
官僚が朝廷で公服に合わせて被る帽子です。黒い絹を張った二段の山型で、後ろの左右に羽根のような角が張り出しているのが特徴です。
見分け方:王の前に並ぶ家臣がそろって被っているのがこれです。左右の羽根が水平に伸びていれば文官・武官の公務中と判断できます。朝議の場面で人物の立場を見分ける目印になります。
翼善冠(イクソングァン)
王と王世子が日常の執務で被る冠です。サモと同じ二段の形ですが、羽根が水平ではなく後方に立ち上がっている点が異なります。
見分け方:紅色の袞龍袍とセットで着用されるため、玉座の人物がこの組み合わせであれば王です。羽根が立っているか寝ているかを見るだけで、王と家臣を確実に区別できます。
冕旒冠(ミョンリュグァン)
王が即位式や宗廟の祭祀など、最高の格式を要する場でのみ被る冠です。平らな板の前後から、玉を連ねた簾が何本も垂れ下がります。
見分け方:この簾は旒(リュ)と呼ばれ、本数が位の高さを表します。朝鮮国王は中国の皇帝より一段下がる形式を用いましたが、大韓帝国が成立して高宗が皇帝を称した際には皇帝と同格の本数に改められました。簾が垂れた冠が出てきたら、即位か国家的な祭祀の場面と考えてよいでしょう。
チョンリプ(戦笠)
武官が軍務や警護の際に被る笠です。毛氈を固めて作られ、丸みのある椀を伏せたような形をしています。
見分け方:孔雀の羽根や飾り紐が付くこともあり、黒笠より小ぶりで動きやすい形です。捕盗庁の捕校や護衛の武士が身につけているのを見かけます。
ペンニプ(白笠)
喪に服している人が被る白い笠です。形は黒笠と同じですが、色を落とした素材で作られます。
見分け方:国王が亡くなると臣民が喪に服したため、画面の男性たちが一斉に白い笠に変わっていたら国喪の場面です。個人の喪と国の喪の両方で使われました。
1895年の断髪令と髷の終わり
朝鮮王朝末期の1895年、近代化政策の一環として断髪令が出され、男性に髷を切ることが命じられました。
しかし儒教の教えでは身体や髪は親から授かったものとされ、それを傷つけないことが孝の第一歩と考えられていました。髷を切ることは単なる髪型の変更ではなく、価値観の否定と受け止められたのです。反発は各地の抵抗運動につながり、命令は一度撤回されました。



髪型が政治問題にまでなったのね。それだけサントゥが「一人前の証」として重かったということなの。
王朝末期を描いた作品で、断髪をめぐって登場人物が激しく対立する場面が出てくるのは、こうした背景があるためです。
男性の装いが分かる韓国時代劇
被り物は、その人物がいまどの立場で画面に出ているかを読む手がかりです。玉座の人物が翼善冠を被っていれば執務中の王、居並ぶ家臣が紗帽なら公式の朝議、主人公が黒笠を被って歩き出せば市井への外出、というように場面が切り替わります。
王と家臣の関係を先に整理したい場合は朝鮮王朝歴代王27人の系図・順番一覧、身分の仕組みは両班とは何かと朝鮮王朝の身分制度が参考になります。
宮中の女性側の装いについては朝鮮王朝の女性の髪型一覧で、王妃・側室・女官の髪型と被り物を解説しています。男女それぞれの装いを並べて見ると、宮廷の場面がぐっと読み取りやすくなります。









